歯科技工士の小宮山です。
前回の豆知識はセレックシステムを用いたCAD/CAM(Computer‐aided design/
Computer-aided manufacturing)で当院が使用しているブロックを紹介しましたが、今回の豆知識ではその中のセラミックのひとつのジルコニアの製作方法について詳しく書きたいと思います。
前回の豆知識でも書きましたが、ジルコニアはとても硬く当初はCAD/CAMには向かない材料だと考えられていました。しかし近年柔らかい状態(半焼成)でミリング(削り出し)した後に、シンタリング(最終焼成)する技術が考えられました。
ミリングする前のジルコニアブロック、黒板に字を書くチョークのように真っ白で、硬さもそれほどなく脆い感じです。
セレックシステムでデザインしてミリングしたジルコニアブロック、前々回の豆知識で書いたように、型取りは口腔内スキャナーを用いて、デザインはコンピューター上で行います。
シンタリング中のジルコニアブロック、1560℃で焼き固めます。他のメーカーのファーネス(焼成炉)だと、通常シンタリングには早くても6時間~8時間かかりますが、佐藤歯科医院にはシンタリングが15分~30分でできるデンツプライシロナ社のSpeed Fireがあるので、ジルコニアでも歯を削ったその日に被せものをセットできる1DAYトリートメントが可能です。
左がシンタリング前のジルコニアブロック、右がシンタリング後のジルコニアブロック、10円玉と比べると少し焼きしまっているのがわかります。焼きしまってもコンピューター上で緻密に計算されているので適合も問題ありません。
表面にグレーズ材(つや出し材)を塗って、再度800℃程度で加熱します。これにより表面は滑沢になります。
【ジルコニアの特徴】
ジルコニアと聞くと、キュービックジルコニアを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、歯科で使われるジルコニアは酸化ジルコニウムを安定化したもので、キュービックジルコニアと成分もほとんど変わりなく、非常に硬くて壊れにくいことが特徴です。他のセラミックだと通常単冠にしか使用できませんが、ジルコニアは大きなブリッジや、インプラントの上部構造にも使用できます。以前は大きなブリッジやインプラントの上部構造は金属を使用していましたが、ジルコニアだと金属を使用する必要がなく、金属アレルギーの心配がないのも魅力のひとつです。開発された当初のジルコニアは非常に光の透過性(透明感)がなく真っ白でしたが、近年は光の透過性に優れているものが出てきて幅広く使用されるようになりました。
ここでひとつ私が携わった症例を紹介したいと思います。
患者さんはカリエス(むし歯)ではなく、若い時の外傷と強い噛みしめで、歯冠破折を起こして数本は抜髄(神経を取る処置)をしています。奥歯ですが、下顎だと笑った時に咬合面(上の歯と噛み合う面)が見えるのと、金属アレルギーも心配なのでセラミック治療をして欲しいとのことでした。噛みしめが強いということで強度のあるジルコニアを選択しました。治療後の患者さんは非常に満足していました。
実はこれ私の口腔内の写真なんです。ジルコニアの表面はテフロンのフライパンのように滑沢でプラーク(歯垢)が付きにくいことを実感していますし、セット(装着)してから一年半経ちますが強い嚙みしめで壊れることもありません。
~最後に~
強度が強く、審美性に優れているジルコニアは、食事や会話で笑ったりした際にも気になることはないと思います。今はコロナ禍でマスクを付けての生活が多く、なかなか大勢での会食や、大きな声を出してのスポーツ観戦やコンサートを楽しめないと思いますが、いずれ訪れるコロナ収束の時に備えて治療してみませんか?
金属の被せものが気になっている方、治療したいけど、どのような材料があるのか迷っている方、いつでもお気軽にご相談に来てください。
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