勤務医の黒木です。
近年、歯周病は生活習慣病と位置付けられており、食習慣、歯磨き習慣、喫煙などの影響を強くうけ、さらに全身疾患との関連性を示唆されています。歯周病は痛みなどの自覚症状がないまま進行することが多く、気付かぬうちに口腔内や全身状態に多大な影響を与える可能性があります。今回は歯周病と全身疾患についてお話させていただきます。
【1】糖尿病
歯周病に罹患すると、炎症反応を促進するタンパク質である炎症性サイトカイン(TNF-α)が血中に放出され、それらによってインスリン抵抗性が増大することにより糖尿病の病態が悪化するとの報告があります。
以上の関連から、歯周病の人は糖尿病のリスクが2倍になるとも言われています。
出典:日本臨床歯周病学会HPより
【2】動脈心疾患
歯周病の人は、心疾患のリスクが約2.8倍と言われています。
歯周病原細菌であるP.gの感染により、血中のCRP濃度が上昇し、心筋梗塞や脳卒中や閉鎖性動脈硬化症のリスクとなる事が判明しています。また、重度歯周炎患者に対して歯周治療を行うことで、血中CRP濃度が有意に低下することも明らかになっています。
出典:日本臨床歯周病学会HPより
【3】骨粗しょう症
国内にて、歯周病と閉経後骨粗しょう症の関連性を調べる研究を行ったところ、骨粗しょう症患者が健康な人より、歯周病が進行傾向であることが報告されました。これについては、通常女性ホルモンであるエストロゲンが、TNF-αなどの炎症性サイトカインの産生を抑制しているのに対し、閉経後でエストロゲンが欠乏している骨粗しょう症患者ではサイトカインの産生が亢進し、急速に骨吸収が進行します。その状態で、重度の歯周病に罹患していた場合、歯周病巣由来の炎症性サイトカインの作用も相まって、さらに骨吸収が進行すると考えられています。
【4】低体重児早産
妊娠中は、各種ホルモンと局所のサイトカインが分娩・出産の調整を行っていますが、①羊水中のサイトカインレベルと歯茎の中のサイトカインレベルに相関関係がある②低体重児早産妊婦は、正常分娩妊婦に比べて歯茎のサイトカインレベルが高く、歯周病原性細菌の検出率が高いなどの関係性が明らかになっており、歯周炎により局所で産生されたサイトカインが、正常分娩時に関与するプロスタグランジンの合成を誘導して早期の早産を招くという説が出ています。
【5】誤嚥性肺炎
慢性閉そく性肺疾患患者及び高齢者において唾液を誤嚥することにより唾液中の歯周病原細菌が肺に到達し、細菌性肺炎が引き起こされると考えれられています。
【6】認知症
アルツハイマー型認知症で亡くなった人の脳から、歯周病原性細菌が持つ内毒素が高頻度で検出される一方、アルツハイマー型認知症でない人の脳からは検出がされなかったという報告や、マウスを使った実験において歯周病が認知症を悪化させるという結果が出ています。また歯周病は、歯を失う原因の主要因である為、歯周病により歯を失い咀嚼機能が衰えることで認知症の進行に繋がるという報告もあります。
以上のように、歯周病は全身状態と密接に関係しています。歯周病に一番有効なのは、歯科医院でのプロフェッショナルケアと患者さん自身のセルフケアの両立です。治療が終わった後の定期的な管理が重要です。
次回の歯の豆知識は・・・
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